北日本新聞文化賞の特集記事です。
まなうらに
 顕ちたるものの
  山車のごと
モロトフのパンかご
 夜を爆ぜゆく
(第一歌集『雪の座』所収)
 昭和二十年八月二日。富山大空襲ではモロトフのパ ンかごと呼ばれる親子焼夷弾が飛散した。生まれ故郷の富山市水橋の防空壕からは、焼ける空が、まるで大 きな山車のようにまぶたに 映った。当時六歳。神通川には死体が浮かび、焼け跡 では片腕を埋めている老婆がいた。この光景が物書きとしての原点だ。
 父・角川源義氏は陸軍二等兵だった。敗れた日本を文化力で立て直すため、戦後すぐに角川書店を設立。 国文学者、民俗学者、俳人であり、父であるより師で あった。
 昭和五十年、父の死の悲 しみから、一時中断していた歌を再び詠み始めた。以来、詩歌でしか表現できない心の領域を大切にし、歌集『闇の祝祭』で現代短歌 女流賞受賞。
 民俗研究で全国を回り、息子を戦地に送った遺族の無念に触れた。父のような兵士や下士官にとっての本当の戦争の姿を知りたいと、兵士たちの遺書や日記を読み続けた。新田次郎文学賞受賞作『男たちの大和』は戦後六十年のことし、映画化される。
 北日本文芸歌壇、全国万葉短歌大会、とやま文学賞 で選者を務める。多くの弟子が慕い、短歌教室の指導に毎月来県する。郷里からの賞に[古里自慢の父が一番喜んでくれるでしょ う」。



辺見じゅんさん 2005.11.13